民法819条(離婚又は認知の場合の親権者)
「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。」
離婚する夫婦に未成年の子どもがいれば、最優先に考えるべきことは子どもの親権者にどちらがなるかです。
民法の定めで親権者を決めなければ離婚できません。
親権者を決めるにあたっては、お互いの様々な思惑を排除して子どもの福祉と利益を最優先に考え親権者を決めてください。
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子どもは両親の離婚問題で精神的に不安定な状況にあることを理解してください。
子どもには親権者を決める前に離婚する理由と変わらぬ愛情をお話しください。
そのうえで、お互いの事情、思惑は置いておき子どもの生育上もっとも好ましい方を親権者として決める必要があります。
なお、子どもに離婚後一緒に暮らして行きたい親の希望があるならその意思を尊重したいものです。
また、明確な意思表示をしない子もいます。
この場合、子どもに親権者を選択させる問いかけはして欲しくないものです。
なぜなら、離婚する事態となっても子の両親への思いは変わらないでしょうし子どもは大人が思う以上に理解力が有り空気を読むと言われています。
両親を思い本心を語れないのかもしれません。
さらに、子どもに親権者を決めさせるのは両親の人生も背負うことの選択でもあります。
子にとって負担が大きく残酷であると認識したいものです。
離婚するにしても二人の子どもです。
ただでさえ、両親が離婚するとなれば子どもの不安は増すばかりでしょう、そんな子どもの心情を汲んでください。
子どもの親権者は二人の話し合いで、子どもにとって最良な親権者を決めて頂きたと思います。
離婚の同意は出来ているが親権をどちらが持つかで、争いが生じるケースがあります。
子どもへの愛情から手元に置いて育てたい親もいれば、配偶者に子の養育を任せたい親も存在いたします。
それぞれ事情はあるでしょうが、子をめぐる争いは子のためにもご自身のためにも決して良いものではありません。
静かな話し合いで親権者を決める円満離婚が理想と考えます。
しかし、残念ながら話し合いがまとまらないこともあります。
その場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立て調停委員の助言を得ながら、親権者を決めることになります。
なお、この調停で同意がなされない場合、調停は不成立となり裁判所が職権で審判を行い親権者を指定することになります。
但し、その審判の決定に不服であれば、無効を申し立てることができ裁判に訴えることができます。
そして、親権をめぐる争いは最終的には裁判で、下記の基準を参考に親権者が決められることになります 。
離婚裁判において親権者を決める基準は、過去の判例の集積から導き出されております。
(親権者決定の判断基準)
裁判所はこれらの基準をもとに判断するのですが、特に現在の監護状況が安定している実績は、今後も問題なく子どもが養育されると期待される重要な事情とされます。
この例を引くまでもなく、裁判所は子どもの福祉を優先して親権者を決定します。
親権をめぐる争いは、このように双方の話し合いや、調停、審判で決まらなければ裁判で決着することになります。
ただし、裁判は禍根を残すことにもなりかねません。
子の健やかな成長と、離婚後の安心な暮らしのためにも円満な話合いで子の親権者を決めたいものです。
親権は未成年の子の法律的権利と義務を代理して行う権利です。
監護権は子を手元に置き養育監護する権利と義務です。
婚姻期間中はこの権利義務を夫婦共同(共同親権)で行いますが、離婚となれば、いずれかの親が親権と監護権を得て、子の養育を行うものと法定(単独親権※)されています。
しかし、まれに子をめぐる争いの妥協から親権と監護権を分け、離婚夫婦が別々に持つことがあります。
(ただし、親権と監護権を分けると子に関する手続きで、様々な不都合が出てくることからお勧めできません。)
別れたい一心で親権を相手に譲り、後日、親権を取り戻そうとしても簡単なものではありません。
一度決定された親権者を変更するには、家庭裁判所に親権者変更の審判の申し立てを行う必要があります。
そして、その審判ではよくよくの事情がなければ親権を得ることはできません。
子の心情を無視して、親の都合で親権者をコロコロ変えることを裁判所は良しとしないからです。
親権者にどちらがなるかは子の心情と福祉を第一に、後先を十分に考えたうえで決めることが大切になります。
親権をめぐる争いや養育費不払い問題に対応するため親権者制度に関して、現行の単独親権だけでなく共同親権の導入が検討されておりましたが単独親権と共同親権を併設する民法改正が成立いたしました。
河北新報2024年5月17日朝刊記事です。ご参考になさってください。
民法改正77年ぶり規定見直し
参院法務委員会は16日、離婚後の共同親権を導入する民法改正案を自民、公明、立憲民主、日本維新の会各党などの賛成で可決した。参院本会議で17日可決、成立する見通し。離婚後親権の在り方を見直すのは77年ぶりで、多様化する家族関係への対応が狙い。一方で、離婚前のドメステックバイオレンス(DV)や虐待の被害が続く可能性が懸念されている。公布から2年以内に施行する。
(23面に関連記事・・・は割愛させていただきます。)
戦前は親権者を原則父親としていたが、1947年の民法改正で見直され、離婚後は父母どちらかを親権者とする現在の制度になった。今回の改正案では、父母双方が親権を持つことが選択可能になる。
父母の協議で決めるが、折り合わなければ家裁が判断する。DVや虐待の恐れがあれば、単独親権とする。既に離婚した父母も共同親権への変更申し立てが可能。
共同親権下でも「急迫の事情」や「日常の行為」に当たる行為は、単独で親権を行使できると規定、用語の定義が分かりにくいとの指摘があり、政府は施行までに内容をより具体的に示す。
一方、DVや虐待の被害継続が懸念されたため、衆院では付則を一部修正。不本意に合意させられることのないよう「父母の真意を確認する措置を検討する」と盛り込まれた。
参院法務委は付帯決議も採択。合意がなくても共同親権と判断される可能性などへの懸念が審議で示された点に触れ、政府や最高裁は格段の配慮をすべきだとした。
改正案は他に、続発する養育費不払いへの対策として、離婚時に取り決めがなくても最低限の支払いを義務付ける「法定養育費」を創設。家裁が調停手続きなどの早期段階で、別居親との「親子交流(面会交流)」の試行を促す新制度も設ける。
なお、下記に共同親権導入までの検討の流れもご紹介いたします。
※ 2018年7月17日、現行民法では離婚後の親権は単独親権とされていますが、上川陽子法務大臣(当時)が記者会見で、離婚後の共同親権の導入を検討していることを表明しました。共同親権の導入には賛否あり、今後の議論の行方が注目されます。
※ 2019年9月27日、法務省は離婚後も父母が子どもの親権を持つ「共同親権」制度導入の是非を議論する研究会を2019年内に発足させると発表しました。
※ 2023年8月29日、離婚後の子どもの養育を検討する法制審議会(法相の諮問機関)の家族法制部会は、要綱案取りまとめに向けた議論の「たたき台」を示した。民法を見直し、離婚後に父母双方の「共同親権」を可能とした。父母が協議して決め、合意できなければ家裁が判断する。
2022年11月の中間試案では単独親権だけの現行制度の維持案を併記していたが、初めて見直しの方向性を集約した。(河北新報2023年8月30日朝刊)
養育費の考え方と養育費を決めるにあたっての簡易算定表をご案内いたします。
ご参考になさってください。
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