離婚協議書に記載したい項目

離婚条件の契約書が離婚協議書

 

記載する項目は公序良俗に反しない限り、どのような内容でも良いことになっております。

 

記載される内容は、別れる夫婦の事情によって様々ですが、一般的に次のような事柄です。

  • 夫婦が離婚に合意したこと
  • 子の親権者、監護者について  
  • 子の養育費について    
  • 財産分与について
  • 離婚原因慰謝料(あれば)について
  • 年金分割について       
  • 子との面会交流について
  • 連絡先、勤務先の異動通知について
  • 公正証書(強制執行認諾約款付)の作成について
  • 清算条項(本契約以外、一切の債権債務がないことの確認)

下記はこれらの項目の解説です。

 

ご参考になさってください。


離婚の合意

 

協議離婚は夫婦二人の話し合いで、夫婦関係を終了させることです。

 

離婚協議書の第1条に夫婦が離婚に合意したことを記すことになります。

 

そして、この条項の次に離婚届の提出日、離婚届を提出する方の名前を記載いします。 


親権者

 

離婚する夫婦に未成年の子どもがいれば、最優先に考えるべきは子どもの親権者にどちらがなるかです。

 

民法の定めで親権者を決めなければ離婚できません。

 

親権者を決めるにあたっては、お互いの様々な思惑を排除して子どもの福祉と利益を最優先に考え親権者を決めてください。


養育費

 

離婚後の養育費とは、子どもと離れて暮らす親が、子どもを養育している親やその子に、支払うべき強い義務のある費用といえます。

 

離婚協議書に記載する養育費に関するポイントは

  • 養育費の金額
  • 支払日
  • 支払い期間
  • 受領方法
  • 養育費の変更(増額・減額)

等です。

 

子どもを育てるには多くのお金がかかります。

 

たとえ両親が離婚しても、親子関係は変わらないのですから、子どもを引き取り養育している親は、他方に対し養育費を請求できます。

 

養育費の支払い義務を難しい言葉で言えば生活保持義務と言います。

 

それは、生活の余力がなくても、自分と同じ水準の生活を子どもに保障しなければならない強い義務とされています。

 

離婚後、親権者として不安なく子どもを育てていくには、養育費を受ける権利を大切にしたいものです。

 


財産分与

 

夫婦の財産は、原則として共有財産とされていますので、離婚する場合はこれを財産分与として公平に分けることになります。

 

離婚協議書に記載する財産分与に関するポイントは

  • 分与される現金等はいくらか
  • 分与される不動産等は何か
  • いつまでに財産分与するか
  • 一括払いか、複数払いか

等です。

 

ちなみに、財産分与はあくまでも結婚生活において築いてきた、財産の精算の問題ですから、どのような原因で離婚に至ったかは問題とならず、分与の割合は2分の1とするのが原則です。

 

財産分与を決めるにあたり、結婚生活の中でどのような財産を築いてきたかリストアップし、評価額(時価)も把握したうえで話し合いを進めてください。

 

分与される財産は一般的には預貯金、家財道具、乗用車、不動産、保険の解約返戻金などがあるほか、夫の退職が間近に迫っているなどの事情があれば、退職金も財産分与の対象になります。

 

なお、離婚による財産分与は、結婚前から所有していた財産や、結婚期間中であっても相手方とは無関係に、取得した財産(自分の親の財産を相続したなど)は分与の対象とはなりませんのでご注意ください。

 

また、財産分与にあたっては「名義」はそれほど重要ではありません。

 

不動産の名義が夫であっても婚姻期間中に購入しローンを返済してきたのであれば、夫婦の共有財産ですし、子どもの名前で預貯金をしていた場合でも、お金の出所が婚姻期間中の夫の給与であれば、やはり夫婦の共有財産と評価されます。

 

さらに、借金や住宅ローンなど負の財産も財産分与の対象になります。

(但し、夫婦どちらかの個人的な借金は連帯保証をしていない限り、財産分与の対象にはなりません。)

 

財産分与は夫婦共通の借金、売却してもなお残債が残る住宅ローン(オーバーローン)の問題、更に、財産分与にかかる税金など、十分理解したうえで、離婚の話し合い、離婚協議書・離婚公正証書の作成に臨む必要があるでしょう。


離婚慰謝料

 

慰謝料は、離婚の原因を作り配偶者に対して精神的苦痛を与えた者に、他方の配偶者が請求できるお金です。

 

ただし、離婚原因をつくれば常に慰謝料の請求が認められるわけではなく、離婚原因となる行為が「違法」である必要があります。

 

不仲、性格の不一致、価値観の違いなどによる離婚原因は違法性が低く慰謝料請求の対象とは認められません。

 

違法性が認められる代表的な例は不倫やDVで通常、間違いなく慰謝料請求は認められます。

 

金額についてはケースバイケースですが、これまでの裁判例の集積によりおおまかな傾向があります。

 

実際の裁判では、行為の悪意性や婚姻期間、相手方の資力などを考慮して決められているようですが、不倫の場合はおおむね200万~300万円が多いようです。

 

ただし、ダブル不倫など夫婦双方の行為に違法があれば違法性が相殺され請求できなくなります。

 

また、配偶者以外の第三者による不法行為で夫婦関係を危うくされた場合は、その第三者へ慰謝料を請求できることは言うまでもありません。


年金分割

 

年金分割とは、婚姻期間中に支払った厚生年金又は共済年金の保険料納付実績を夫婦で分けあうことです。

 

夫が会社勤めや公務員の場合、国民年金のほかに、厚生年金、共済年金に加入していますが、妻が専業主婦の場合は、妻自身は国民年金(基礎年金)にしか加入していないことになりますから、離婚後受け取れる年金額に差が出てしまいます。

 

特に婚姻期間が長く離婚した場合、その差は大きく妻側に不利な状況がありました。

 

しかし、夫が厚生年金、共済年金の保険料を納付できた背景には妻の貢献もあるのですから、その貢献を年金額に反映させるため、2007年4月その不公平を解消するため厚生年金・共済年金の分割制度ができました。

 

年金分割制度のポイントは

  • 年金分割の対象は厚生年金または共済年金
  • 配偶者の国民年金は分割対象外
  • 分割対象は婚姻期間中に支払った分のみ
  • 分割割合は最大で5:5迄
  • 分割請求手続きは離婚の翌日から2年以内
  • 分割方法は合意分割・3号分割の2種類

です。

 

詳細は年金分割の続きをご覧ください。


面会交流

 

両親が離婚して、いずれかの親のもとで養育されている子どもでも、別居している親との親子関係は切れるものではありません。

 

民法は離婚によって離れて暮らすことになった子どもと別居親との面会交流について、両親は子の利益を優先して必要な事項を定めなければならないと記しています。

 

離婚協議書に記載する面会交流に関するポイントは

  • 面会回数(月に何回会うか)
  • 面会時間(どの程度の時間一緒にいるか)
  • 場所(どこで会うか)
  • 会う方法(親権者が同伴するか等)
  • 贈り物、お小遣いを渡せるか

等です。

 

離婚に至った事情によっては相手方に子どもを会わせたくない方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、面会交流は子の権利です。

 

子どもの考えも聴きながら、慎重に面会交流の内容を決めて頂きたいと考えますがいかがでしょうか。

 


異動通知

 

離婚後の連絡先、勤務先の異動通知はどうするかです。

 

離婚後、相手と連絡を取り合うことを好む方は少ないと思います。

 

また、平穏な生活を送れていれば連絡の必要もないのが現実でしょう。

 

ただし、あなたと暮らす子どもが、別居親と会いたいと言ったとき、その親の所在が分からないでは、子どもはどんな思いを抱くでしょう。

 

また、離婚時に約束された養育費などの支払が実行されない場合、その実行を求める催促(内容証明郵便)をするとか、法的に約束の実現(強制執行)を図りたくても連絡が取れないのでは非常に不都合です。

 

反面、離婚後は相手に所在先を知って欲しくない方もいらっしゃるでしょう。

 

せっかく、離婚協議書・公正証書を作るなら、互いに異動通知をするという文言を入れたいところですが、事情を深く考え、記載するかどうかを決めてください。

 

なお、離婚協議書はもとより公正証書で連絡先、勤務先の異動通知をすることに合意し記載しながら、それに反し異動の連絡をしないとしても、なんら法的に執行力を持つものではありません。 


公正証書の作成

 

離婚協議書に記される内容はどれをとっても離婚後のあなたの生活にとって大切なことです。

 

特に金銭の支払い約束に関する契約は大事です。

 

しかし、離婚協議書は私人間の契約書であり、相手が約束を破れば契約をした証拠にこそなれ、その約束を強制する力はありません。

 

離婚協議書に強制執行認諾約款付公正証書(以下公正証書)を作るという条項を加えてください。

 

この公正証書には、離婚協議書の弱点を補う強い力があり、金銭の支払い契約を守ってもらえなければ地方裁判所へ裁判なしでも強制執行の申立てができます。

 

そして、その結果として約束を守らない相手方の預貯金、給与等の差し押さえができ、約束された金銭の支払いを得ることができます。

 

さらに、公正証書を作成することには、それ以外の効用もあります。

 

離婚公正証書の多面的な効用を記しました。

 

ご参考になさってください。 


清算条項

 

清算条項の目的は離婚条件を記した契約書である離婚協議書・公正証書に定めた内容以外は当事者間に債権債務がないことをお互いに確認することにあります。

 

清算条項の文例は下記のとおりです。

 

  • 夫と妻は、離婚協議書・公正証書に定めるほかは他に何らの債権債務がないことを相互に確認する。
  • 夫と妻は、本件離婚に関しては以上の内容をもって解決したものとし、今後は財産分与、慰謝料などの名目の如何を問わず、お互いに何らの請求をしないこととする。

 

なお、財産分与は離婚成立から2年、慰謝料は相手方の不法行為を知ったときから3年経過するまでが請求期限(時効)ですが、離婚協議書・公正証書にこの清算条項を記載すれば、その期限に関係なく請求できなくなります。

 

(ただし、子の権利でもある養育費の給付に関しては、この条項には含まれず請求できますし、事情変更の原則にもとづき増額、減額などを求めることもできます。)

 

清算条項はこのように例外はありますが、一旦解決した離婚トラブルを蒸しかえさないための重要な契約であることをお互いが理解、納得したうえで署名押印する必要があります。


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